投稿 読書 エッセイ

あの頃と変わらない居酒屋で知る「本当のお酒の楽しさ」

昔、通っていた居酒屋。

また通い始めた。

この店を応援したくなったからだ。

大将とおかあさんが好きだから。

二人とも昔より随分歳をとってしまった。

でも、まだまだ健在。

そしてこの店も、健在。

時間の流れに取り残されたように。

※ 本ページはプロモーションが含まれています。

ボトルキープを言い訳にして

ボクはその居酒屋ののれんをくぐった。

引き戸を開けるとそこにはすぐカウンターがある。

「いらっしゃい!」

大将の元気な声が迎えてくれた。

ボクはカウンターの席に座った。

おしぼりをくれながらこの店のおかあさんが

「そこは暑いからこちらにしたら?」

と、薦めてくれる。

ボクは席を3席隣に移動しながら既に飲み込まれていた。

この店の優しい雰囲気に。

この日、ボクの家族はみんなそれぞれ出かけていた。

晩ごはんはボク一人。

どこか食べに行くか。

そういえば、ボトル入れてたんだっけ。

夕方の帰り道で、自分で自分にこの店に来る言い訳するようにひとり言をつぶやいていた。

そのままの流れで今、カウンター席に座っている。

今日も暑い。

この店に来るため、言い訳に使ったボトルは後回し。

生ビールを注文した。

そして、焼き鳥5本。

ボトル入れてください

昔通っていたこの店にまた通い始めたのはボトルキープしたからだ。

ボトルキープした理由は少し前に時をさかのぼる。

その晩は、友達二人で定例の飲み会だった。

センスが無いボクは自然と友達にお店選びを任せてしまう。

今回の会場に、友達は昔ボクが通っていた居酒屋を選んでくれた。

この居酒屋には、もう随分と行ってない。

大将とおかあさん、元気にしているかな?

大将は相変わらず焼き台の前で汗をぬぐいながら仕事しているのだろうか?

おかあさんはあの優しい笑顔のままだろうか?

のれんをくぐった。

多少、リニューアルされている店内。

カウンター越しに二人は居てくれた。

二人ともそれなりに歳を重ねている。

だが、健在だった。

まずは一安心。

友達と二人、カウンターに座って早速注文する。

そのまま、楽しくお酒を飲んだ。

「会計お願いします」

ボクらが言うと

「ああ、おあいそね。」

と、大将が言う。

そうだった。この店は会計をおあいそと言うんだ。

そんなところも昔のままだ。

おかあさんが伝票片手に電卓で計算する。

これも昔通り。

カウンター越しに二人を見ていて、ボクはふと、ある衝動にかられた。

この店がいつまでも続いていて欲しい。

自分でも意外なことを言っていた。

「すみません、ボトル入れてください。」

黒霧島を1本、キープした。

友達と二人でボトルに名前を書いた。

ボトルを入れることで売り上げに貢献する。

この店を、大将とおかあさんを応援したいから。

そんな理由でボトルを入れた。

焼き鳥 枝豆 ビール たまに原稿

ボクの中の時が今日に戻った。

この日は有線のBGMの他にラジオの野球中継も一緒に流れていた。

大将は野球好きだ。

ゲームで何かあるたびに歓声を上げたり落胆したりしている。

普通の店ならお客さんはいい気はしないだろう。

だが、大将は違う。もう別格だ。

ああ、今日は野球やってるのね、くらいでBGMの一部と化している。

ボクはそんなBGMを聞き流して、早速おかあさんが持ってきた生ビールをやる。

くー、効くぅ!

そして、焼き鳥を待ちながら、お通しの枝豆をつまみにビールを空けていった。

そして、スマホを取り出す。

原稿がまだ書けていないのだ。

今夜中に原稿を上げる予定なのに下書きが途中までしか終わっていない。

ボクは焼き鳥を待つ間、スマホで原稿の下書きをしていた。

ビール、枝豆、ビール、枝豆、原稿、ビール、ビール、枝豆・・・。

「あいよ、焼き鳥!」

声がして、スマホ画面から視線を大将の方へ移す。

こんがり焼けた焼き鳥5本。キャベツの上に置かれて湯気を立てていた。

1本手に取って、アツアツ言いながら食べる。

また、ビール。

枝豆、ビール、焼き鳥、ビール、枝豆が無くなる、原稿、焼き鳥、ビール。

焼き鳥を待つ間だけのはずが気分がのってしまい、そのまま原稿を書くハメに。

原稿がどんどん進んで行く。

み ボトル登場

酒の力なのか、この店の雰囲気なのか。

原稿作成は順調に進んで終盤に差し掛かっていた。

ビールジョッキが空になった。

「おかあさん、ボトル出してください。」

ボクは言った。

棚にボトルを探しに行く。

だが、ここで問題発生。

ボトルが見つからない。

改めてボクの名前を告げて、おかあさんと二人でボトルを探した。

ないないない・・・。

あった。

ボトルに名前は書いてあったが、ボクの文字は文字ではなかった。

友達の名前がハッキリ書いてあったのでそれでわかった。

友達に感謝。

どんだけ酔っぱらってるんだよ、あの時のボク。

「水割りでいいかしら?」

相変わらず優しくお母さんが聞く。

氷、マドラー、ピッチャー、そしてグラス。

ボクの席にやっとボトルが登場できた。

塩サバ

カロカロン

グラスに氷と黒霧島を入れてワザと鳴らしてみた。

うん、いい感じ。

水を入れてマドラーで3回かき混ぜる。

ちびちびやりながら考えていた。

塩サバ、注文しようかな・・・。どうしようかな・・・。

「大将、塩サバください。」

頼んでしまった。

原稿は書き終えてしまった。

あとは家に帰って清書して送ればいい。

塩サバを待つ間のつまみはさっきの焼き鳥についていたキャベツ。

ボクは黒霧島とキャベツをちびちびやりながら、気がついてしまった。

今、ボクはお酒を楽しんでいる。

昔、この店に通っていたころのボクでは味わうことができない楽しさだった。

あの頃と違い、今のボクはムダな人付き合いをしていない。

人間関係を断捨離したと言っていい。

飲みに行くのは気の合う友達だけだ。

だから、昔と違って飲み会は当然楽しい。

でも、それは飲み会が楽しいのであってお酒が楽しいわけではない。

今、ボクはお酒を楽しんでいるのだ。

初めて知った感覚だった。

つまみを待ちながら黒霧島を飲んでいる間にBGMが変わる。

松田聖子だ。

イイね。

ボクはつぶやいていた。

なんとなく、ジュークボックスの横でお酒を飲んでいる気分になる。

今の若いコ、ジュークボックスなんて知らないだろうな。

なんて考えながらクスリと笑う。

ボクは完全にお酒に飲まれている。

お酒の本来の楽しさに飲まれている。

なんて事考えてたら塩サバが来た。

焼きたてほやほや!

うんまそぅ~!

酒を飲まずにがむしゃら塩サバを食べ尽くしてしまった。

この店のつまみが何を頼んでもおいしいのも昔から変わらない。

玉子焼き

BGMがZARDに変わった。

ボクは玉子焼きを注文した。

玉子焼きはおかあさんが焼いてくれる。

昔からそうだが、この店に来ておかあさんの玉子焼きを食べないとボクはこの店から出られない。

黒霧島の水割り、2杯目。

ちびちびやりながら玉子焼きを待つ。

玉子焼き食べたら原稿を送らなくちゃだな・・・。

帰り時間が迫って来ていた。

大将とおかあさんの人柄。温かさ。

出てくるつまみが全部おいしい。

古びているが手入れが行き届いたカウンターと厨房、店内の装飾。

ボクのハートを鷲づかみにするBGM。

こんな環境で飲むお酒が楽しくないなんてこと、あり得ない。

お酒を飲んでいるというより、心を遊ばせている感覚。

2杯目を空けてしまったころに玉子焼きがやってきた。

最初はそのまま食べる。

次にマヨネーズをつけて。

その次しょうゆをちょっとだけ垂らして。

おかあさんの玉子焼き、最高だ!

また、酒も飲まずにがむしゃらに食べてしまった。

野球中継のヒーローインタビュー、お客さんの笑い声、B`z。

ごちゃまぜになった状態でボクを包み込んできた。

この雰囲気、イイね。

大将が厨房でタバコをいっぷく。

ヒーローインタビューにニヤニヤしている。

これもまた、昔からの光景。

今なら「飲食店でタバコなんて・・・」などと眉をひそめられそうだ。

しかし、もう一度言う。

マスターは別格なのだ。

規制を超えて全て絵になる漢なのだ。

玉子焼きを食べ終わってすっかりお腹いっぱい。

ボクは気分を良くして3杯目の水割りを作って一口。

おや?今までの中で一番濃いぞ。

しまった。

これ以上飲んだら原稿に穴を空けてしまう。

この店に一つだけ欠点がある。

居心地が良くて、ついつい長居してしまうところだ。

でも、せっかく作った水割りだし・・・。

このいっぱいを飲んだらおいとましよう。

きっと、そうしよう。

おわり

最後にお願いです。

Xのアカウントをお持ちの方。
この記事をみて、感想などありましたら下のXボタンからつぶやいてみてください。

筆者の励みになります。

よろしくお願いします。

  • この記事を書いた人

むにゅひこ

普段は楽しく用務員さんをしているアラ環オヤジです。趣味は釣りと登山、下手な料理、読書、DIY、ソロキャンプです。このブログでは用務員さんの仕事で見つけたDIY、自分が適応障害だった時の経験、趣味のこと、何気ない日常のことなどを雑談感覚で書いています。また、自分がした買い物で「いい買い物をしたな」という情報を積極的にみなさんに発信しています。暇つぶしに雑談を楽しむようなブログがコンセプトです。

-投稿, 読書 エッセイ
-

error: Content is protected !!