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ダンジョン迷子のリトルちゃん三、魔物たちの棲み処 - 1

前回のお話はこちら

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魔物たちの棲み処 - 1

もう、後ろからの熱風を感じないところまで歩いてきた。

特に罠らしい罠が無いことがシュウナには意外だった。

「今、自分がたどっている道がこのダンジョンの持ち主が通る為の道なのではないか?」

と考えてみる。

さっきの石像の部屋では壁に重力魔法が施されている事さえ知っていれば

なんという事もなく通れる道だ。

それにシュウナが見る限り石像の部屋から今まで罠らしい罠はない。

では、このダンジョンの持ち主はどのような人物なのか?

考えは途中で止められた。何故なら自分の進む通路の先に新たな入り口が見えたからだ。

シュウナは注意深く新しい部屋の入り口へ近づいていく。

入り口にドアは無い。

どうやら部屋の中も通路と同様で光るコケで微妙に明るさを保っている事に変わりはないようだ。

と、シュウナはちょっと後ずさりした。獣の臭いを嗅いだような気がしたからだ。

静かな息遣いも聞こえてくる。

シュウナは気を取り直してまたゆっくりと入り口に近づきそっと部屋の中をのぞきこんだ。

部屋の作りはさっきと同じ円柱の形に荒く切り取られたホールになっている。

真正面にやはりドアのない出入り口が見える。そして、部屋の中の息遣いの正体は・・・。

 「雷獣・・・。」

森に住む大人の熊と同程度の大きさで茶褐色のふわふわの毛におおわれている。

首回りだけが輝く金色の毛が生えるのが特徴だ。

特徴はそれだけではない。

雷獣というだけあってその体は電気を常に帯電している。

敵と見なせば相手に電撃で攻撃する厄介な獣だ。

ここは雷獣の棲み処のようだ。

だが、雷獣は眠っているようだ。

部屋の端を気づかれないように歩いて行けば余計な災難を避けられそうだ。

ゆっくりゆっくりシュウナは歩いた。雷獣との距離が少しずつ近づいていく。

ちょっとでも音を立てたら雷獣が起きてしまう。そうなれば台無しだ。

部屋の壁伝いに歩きながら何とかなりそうだと思ったその時・・・。

 「ん?」

軽い驚きの声を上げて慌てて口を両手で塞いだ。

幸い雷獣はよほど眠いのか目を覚まさない。

シュウナは目を細めてもう一度雷獣の顔のあたりを見た。

そして、がっかりした。

何故なら、雷獣の顔の真ん中、鼻の上で小さなリトルちゃんが気持ちよさそうに眠っていたからだ。

「なんであんなところに・・・。」

他に場所もあるだろうによりによって雷獣の鼻の上でお昼寝とは・・・。

といって、シュウナは放って置くわけにはいかない。

近寄っていって普通にそっとリトルちゃんを捕まえるか?

ムチで遠くから絡めとるには危険すぎる。

シュウナは自分のザックの中から使えるものが無いか探ってみた。

そして、

「これ、高かったんだけどなぁ・・・。」

選んだのは魔石、自分を透明にする魔法が込められている。

魔石に記憶させたシュウナの血液情報によって

シュウナが使用したいときにだけ魔法が発動するようになっている。

シュウナは魔石を手に握って魔法の発動を命じた。体が徐々に透明になっていく。

そんなに時間をかけずに全体が透明になった。

ゆっくりと雷獣の方に近づいていく。

体が透明になっても音を立てたら全て終わりだ。

もう少し、あともう少し。雷獣の鼻に手が届くくらいに近づいた。

そっと、眠っているリトルちゃんを両手ですくい取った。

成功だ!

そのままゆっくり、ゆっくり、ゆっくり後ずさりする。

ゆっくり反対側の出口へ行こうとしていると手の中のリトルちゃんが目を覚ました。

もぞもぞ動くと誰かに捕まえられている自分に気づいて驚いたのか、

「ピー!」

と、いきなり叫んでもがき始めた。

「うわ、ばか!じっとしてろ!」

シュウナは思わず声を上げてしまった。

そして・・・。

目を覚ましてしまった雷獣と目が合う。

自分の体は今透明だから大丈夫・・・だろう。

だが、目が合っている。どうやら気づかれたか?

シュウナは目をそらして走り出した!

その瞬間!

雷獣は咆哮と共に雷撃を吐いた!

横っ飛びに飛んでシュウナはかわす。

リトルちゃんを抱きかかえながら一回転すると立ち上がり、また、走り出す。

二度目の咆哮と雷撃!轟音!

今度はかわしたものの、爆風で体ごと吹き飛ばされた。

とにかく、今できることはリトルちゃんを連れて逃げるだけだ。

そう心に決めたシュウナは起き上がって走り出した。

出口に飛び込んだすぐ後に雷獣が出口の壁に激突した。

体が大きく通路には入って来れないようだ。

これではシュウナ達を追ってこれない。

助かった・・・。

シュウナが思ったのも束の間、すぐに恐怖を感じた。

雷獣は自分の体の大きさで通れない通路目がけて今まさに三度目の雷撃を打とうとしている。

とっくに術は解けてシュウナははっきりと姿が見えている。

そこに狙い定めて三度目の雷撃!

とっさに伏せた。

自分のマントが焦げているにおいがする。

立ち上がる。

周辺の通路の天井が崩れ始めた。

迷宮の奥へ向かってリトルちゃんを抱きかかえながら走った。

後ろで天井が落ちる音が響いている。

天井か崩れた粉塵で雷獣からの視界が遮られた。ひたすら走った。

次回予告

シュウナが何とか迷子のリトルちゃんの一人目を見つけたその一方で

トルーデ達はゴブリン達の棲み処へ潜入する。

そして、そこに待ち受けるゴブリンとの戦闘が始まる!

トルーデの運命やいかに!

さらに、迷子のリトルちゃんを見つけることはできるのか?

次回、魔物たちの棲み処2 

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乞うご期待!

  • この記事を書いた人

むにゅひこ

主に釣りと登山をこよなく愛する雑談好きなおじさんです。

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