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冒険者たち2
「ホーホー、大変だよ、大変だよ。」
部屋中を飛び回りながらフクロウは人の言葉で言った。
せっかくの食事にフクロウの羽やらホコリが落ちてはかなわない。
トルーデは上に向かって言った。
「人の食事の上で飛び回るな!このバカフクロウ!」
女の子には不似合いな武器を振り回し怒っている。
トルーデに向かって人差し指を口の前で立てるとシュウナが言った。
「何が大変か聞いてあげるから降りておいで。」
そして自分の右手を差し出す。
右腕にフクロウはお行儀よくとまった。フクロウの習性で自分の頭をクルリと回す。
「さあ、話してごらん。」
なるべく優しくシュウナはフクロウを促した。
フクロウはくちばしを開いて話し出した。
「ホーホー、大変だよ、大変だよ。リトルリルランドが大変だよ。」
トルーデとシュウナは顔を見合わせる。姉の方がフクロウに聞いた。
「リトル・・リ・・・ラン?なんじゃそりゃ。」
シュウナも怪訝な顔をしている。そんなことにはお構いなくフクロウは続ける。
「ホーホー、リトルリルランドはリトルマザーをはじめリトルリル達が暮らす平和な国。」
さっぱりわからない・・・。
フクロウは構わず続けた。
「リトルリルは妖精の子供、子供たちの何人かがマザーの見ていない隙に出て行った。
嘆きの森の方へ向かったらしい。その後、ゆくえがわからない。」
二人はまた顔を見合わせた。やっと知っている場所の名前が出てきたからだ。
嘆きの森。
姉弟の家から北に三日ほど歩くと見えてくる森だ。
普段用事が無いので行った事はないがあまりいいウワサは聞かない。
その名の通り、森に行けば仲間の死や己の不幸を嘆く事になるというのがその名の由来だ。
この、地方の人間はまず近づかない。
シュウナは手にフクロウを乗せたまま自分のマグカップを取ってお茶を飲む。
飲みながら訊いた。
「なんでまた、そんな所へ子供たちが行くんだい?」
フクロウはちょっと羽をはためかせて答えた。
「リトルリル達はいたずら好き。
マザーや他のリトルリルの目を盗んで空飛ぶボードでランドを飛び出した。」
トルーデはパンをかじりながらフクロウに訊く。
「それで、嘆きの森に行ったのがどうしてわかったの?」
フクロウはくるりと首を回してトルーデに言った。
「リトルリルがみんなで探した。ボードが嘆きの森の奥深く、
帰らずの洞窟の入り口に落ちていた。足跡もあった。」
トルーデはシュウナに目配せをした。
気づいたシュウナはフクロウをイスの背もたれに移しておいて
二人は部屋の隅でひそひそ話す。
「帰らずの洞窟でしょ?なんかやばいよ。この話。」
あまり物おじしないトルーデが珍しく消極的だ。
帰らずの洞窟
二人とも噂程度の知識しかないがその名の通り一度洞窟に入ったら二度と出て来られないという。
その噂を考えればトルーデの態度も当然だが・・・。
シュウナは黙ってうなずいている。この姉弟の意見は一致していた。
かかわるには危険なのではと。
羽を繕っていたフクロウは姉弟の結論を察したように翼をこちらに向かって広げると言った。
「リトルマザーが二人を呼んでいる。話だけでも聞いて欲しい。報酬も用意している。」
報酬ときいてトルーデの目が光った。
「まあ、話だけなら・・・」
「何言ってんだ、トルー・・・」
シュウナが言いかけた時にはフクロウの姿は一変した。
フクロウはみるみる巨大化してやすやすと天井を突き破った。
二人のアジト、ログハウスが音をたてて崩れる。
二人は慌てて降り注ぐがれきをよけながら自分たちの武器
トルーデは剣
シュウナはムチと魔道具が入った袋を手にした。
「何すんだー!このバカフクロウ!」
トルーデの罵声をものともせず大きさの割には器用にくちばしで二人を捕まえて
自分の背に放り出す。
そのまま空高く舞い上がった。
「ちょっと待て・・うわっ!」
こうなれば二人は背中にしがみつくしかない。
こうして半ば強制的に二人の冒険者たちはリトルリルランドへ連れていかれた。
つづく
次回予告
フクロウに無理やり連れて行かれたトルーデとシュウナ。
二人の行先は妖精の国、リトルリルランド。
最近仕事が無かった用心棒の姉弟ですが
どうやら仕事の依頼があるようです。
どんな依頼が二人を待ち受けるのか?
次回 冒険者たち 3
乞うご期待!