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冒険者たち3
前回のお話はこちら
「何すんだー!このバカフクロウ!」
トルーデの罵声をものともせず大きさの割には器用にくちばしで二人を捕まえて
自分の背に放り出す。
そのまま空高く舞い上がった。
「ちょっと待て・・うわっ!」
こうなれば二人は背中にしがみつくしかない。
こうして半ば強制的に二人の冒険者たちはリトルリルランドへ連れていかれた。
しばらくはフクロウがどこを飛んでいたかはわかったが、
途中から大きな雲の中に入り視界が真っ白になった。
気が付くと抜けるような青空の中を進んでいた。
目の前には白い尖塔が中心に立つ城、その周りには水と緑の豊かな街が広がっていた。
これが、リトルリルランド・・・
トルーデとシュウナはその美しさに息をのんだ。
二人を圧倒したままフクロウは飛んでいく。
やがて虹色に輝く池のほとりに降り立った。
そこにはとんがり帽子にシルバーのワンピース姿の小さな女の子が二人立っていた。
二人の背丈は人間の赤ん坊より小さくリスのような小動物くらいだろうか。
どうやらトルーデとシュウナ、二人のお客さんを迎えに来たらしい。
フクロウに向かってピーピーと話しかけている。
二人とも小さなヤリをもっているところを見るとリトルリルラントの衛兵なのだろうか?
二人の衛兵?は体全体でついて来いと姉弟に言っている。
二人は素直に衛兵の後をついて行った。
シュウナもだが特にトルーデは自分たちのアジトを破壊された文句を
絶対に言ってやろうと力強く歩いていた。
城に入っていった。
中ではやはりとんがり帽子にワンピースの小さな女の子たちがウロウロしている。
やがて、ひとつの部屋に案内された。ドアが閉まるとひとりでに部屋ごと上昇した。
部屋を出ると純白の調度品が並ぶ部屋に通された。どうやら上の階にやって来たらしい。
女の子達の後について部屋の奥に進む。
そこにはとんがり帽子をかぶりクリスタルブルーのロングドレスに身を包んだ女性が立っていた。
トルーデ達より頭一つ分背が高い。
まさに女王の風格。
姉弟を見つけると軽く会釈して話しかけてきた。
「こんにちは、私はリトルリルマザー。この国の女王です。」
なんとなく気を飲まれ、姉弟も会釈を返した。
「急なお呼びたて申し訳ありません。」
女王リトルリルマザーのこの言葉にトルーデが思いだしたように言い出した。
「申し訳ないじゃないわよ!人の家ぶっ壊しといて、何よあのバカフクロウはっ!」
トルーデの言葉にひるむ事は無いがマザーはそばの女の子に何かささやいた。
さっき二人を案内してくれた女の子は部屋を飛び出して行った。
マザーは、お客に向かって優しく答える。
「トルーデさんのおっしゃるとおりですね。少しお待ちください。」
すぐにフクロウが窓から入ってきた。背には女の子を載せている。
部屋に入ると女の子はすぐにどこかへ行ってしまう。
フクロウはそのままマザーの肩にとまった。
「ホーホー、お呼びですか?マザー・・・ぐほっ!」
いきなり、マザーのアッパーカットがフクロウに炸裂した!
フクロウはぶっ飛ばされて青空の向こうにキラリ光った。
トルーデもシュウナも息をのんだ。
背中に変な汗を感じる。
「お家はあとで責任を持って修復いたします。まずはお話を聞いてください。」
マザーの言葉に姉弟はうなずいた。シュウナが丁寧に話を切り出す。
「フクロウからだいたいの話は聞きました。まず、何故我々なのですか?」
トルーデも後に続く。
「そうよ、勝手に来て家をぶっ壊して一体なんなのよ!」
また、トルーデの怒りがぶり返した。しかし、マザーはにっこり微笑んで答えた。
「森で以前、我々リトルリルの子を助けてくださいました。」
うん?そんなことあったっけ?シュウナが考えているといきなり
「あー、あったあった。」とトルーデ。
「なんか森でリトル・・・ちゃん、だっけ?女の子が蜘蛛の巣に ひっかかっていたっけ。」
トルーデはその女の子がリトルリルだったという事に思い至ったらしい。
すると、緑のワンピースととんがり帽子のリトルリルが
トルーデのそばに来てぴったりとくっついた。
マザーは言う。
「おかげでその子は成長して、今はグリーンリトルになることが出来ました。
ありがとうございます。」
そう言うとゆっくりと頭を下げた。
なんだか説明が足りないがどうやらリトルリルは一人前になると自分の色が決まるらしい。
それによって役どころもきまるのだろうか?
そのグリーンリトルは恩人であるトルーデにほおずりしている。
トルーデは戸惑いながらもまんざらではなさそうだ。
「なるほど、以前助けてもらったから今回も助けてもらえると、そういうことですか?」
シュウナがマザーに問いかける。
マザーはうなずいた。そして、シュウナの言葉に付け足す。
「それだけではありません。こちらもあなた方の事を調べさせて頂きました。
二人とも十四、五歳ほどだというのにその辺の大人よりもよほど腕が立つようですね。
賞金稼ぎに隊商の護衛、用心棒、トレジャーハンター。
依頼がくれば何でもこなす凄腕のマークス姉弟。」
シュウナは腕組みをして黙った。トルーデは少しアジトを壊された怒りが和らいだようだ。
マザーは続ける。
「姉のトルーデ・マークスは剣を取ったら一流でケンカは負け知らず。
弟のシュウナ・マークスは魔道具を取り扱う秘術師、ムチの腕もなかなかのようですね。」
ここまで言われるとトルーデは悪い気はしないようだ。うれしそうにマザーへ言う。
「まあ、そんなところね。だけどどんな依頼でも引き受けるというわけじゃないわ。」
「その危険に見合った報酬次第です。」
シュウナが会話の途中をもぎ取ったが、また、トルーデが言う。
「あと、おもしろそうかどうか、かな。」
横目でシュウナが睨んでいる。調子にのった姉にいつも振り回されているからだ。
マザーはそんな姉弟たちに微笑むと改めて依頼内容を話して聞かせてくれた。
次回予告
森と水の豊かな妖精の国、リトルリルランドへやって来たトルーデとシュウナ。
二人はリトルリルの女王、リトルリルマザーと対面しました。
マザーから二人への依頼内容が知らされるみたいです。
果たしてどのような危険が二人を待ち受けるのでしょうか?
次回 冒険者たち 4
乞うご期待!