ボクは旅をすることになった。
と、言っても遊びに行くわけではない。
法事があるので実家に行くだけだ。
遊びに行くわけではないので特に面白みはない。
どうすれば、面白くなるだろうか?
ボクはある考えに至った。
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おもしろき こともなき世をおもしろく
おもしろき こともなき世をおもしろく
これは幕末の維新志士、高杉晋作の辞世の句である。
単刀直入に言って、ボクはこの句が好きだ。
ボクがまだ若いころ、人生は切ないくらいにドキドキワクワクするものだと思っていた。
今もそれを否定はしない。
でも、人って気がつけば気持ちが勝手につまらない方向に流されていく。
人生を楽しむには努力が必要だ。
高杉晋作の句をボクが好きな理由は、面白いことが無い世の中という前提で世界を変えようという意志を感じるから。
人生は楽しむ努力が必要なことをこの短い句の中に詰め込んでいる。
人生は楽しむ努力が必要なんだ。
6つのミッション
今回の旅は
3連休を使って実家に行き、法事に参加して帰る
というなんとも味気ないものだ。
これだとただ、せっかくの休みを法事で潰しただけになってしまう。
休みが休みじゃないという状況だ。
これではつまらない。
どうすればおもしろいこともない旅をおもしろくできるだろうか?
ボクは自分に6つのミッションを課すことにした。
ミッションをクリアすることでその過程と結果を楽しめればいい。
そう思ったからだ。
ボクが考えたミッションは次の通り。
- 関東のそばを食う
- 関東ならではのおやつ、またはアイスを食う
- 母の家で茶会を開く
- みやげにナルトを買う
- おふくろの味を習う
- 思い出の品を一つゲット
1.関東のそばを食う
ボクは西日本の人間だが、実家は関東にある。
西日本と東日本ではそばの味が違うらしい。
ボクは味音痴でよくわからないけど、どうやらそうらしい。
ぜひ、味わいたいものだ。
2.関東ならではのおやつ、またはアイスを食う
ボクは旅先で地元のスーパーに寄るのが好きだ。
そこにしかない食材や商品に出会えるから。
今回はおやつ、またはアイスに限定して新しい出会いに期待したい。
3.母の家で茶会を開く
今回は実家に泊まることになる。
以前から母が抹茶を所望していた。
茶器は母の日に「抹茶スタートセット」を送ってある。
抹茶をいっぷくする機会くらいはあるだろう。
母の望みを叶えて、簡単に親孝行できそうだ。
4.みやげにナルトを買う
先にも書いたが私は西日本の人間だ。
そして、私のいる地域にはナルトが市販されていない。
なので、関東に行くたびにナルトを買って持ち帰っている。
5.おふくろの味を習う
一つ習いたい料理がある。
だが、母の言い方はいつもざっくり感覚派。
なので、今回できればキチンとレシピとして持ち帰りたい。
6.思い出の品を一つゲット
これは友達から提案されたミッションだ。
思い出の品といってもポケットに入る程度の物という条件付きだ。
これなら持ち運びに面倒ではなく、家族や周囲に迷惑をかけないだろう。
それぞれの結末
6つのミッションは自分でも楽しくなるように考えたものだ。
ところが達成が意外と難しかったものもあった。
思わぬ番狂わせがあったからだ。
1.関東のそばを食う
関東のそばといっても、ボクが特に目指しているのは「立ち食いそば」だ。
できれば、駅の構内にあるそば屋がいい。
学生の頃味わったあの雰囲気が理屈抜きで好きだからだ。
帰りのスケジュールはバタつくので、できれば行きで食べてしまいたい。
そう思っていたのだが、飛行機が1時間25分遅延。
もともと夕方のフライトだったがさらに遅延した。
もう、立ち食いそばどころではない。
その日のうちに実家に辿り着けるかの問題になってしまった。
結局、この日は深夜0時30分に実家に着いた。
その後、実家滞在中は常に母の手料理を食べるという謎ルールに従うことなる。
立ち食いそばは望めない。
あきらめかけたその時、地元のスーパーでこれを見つけた。

どん兵衛天ぷらそば
日清はそばやうどんの味付けを西日本と東日本で変えているのは有名な話だ。
うん、これにしよう。
ボクは迷わずどん兵衛天ぷらそば東日本限定を買った。
家に帰ったら食べよう。
ミッションクリア
2.関東ならではのおやつ、またはアイスを食う
地元のスーパーで買い物しながら関東ならではのものを物色した。
ここで思わぬことに気が付いた。
関東ならではのものって何よ?
そうなのだ。
関東でメジャーなものは大概全国で売っている。
スーパーで見る商品はどれもこれも私の家の近所のスーパーで見るものばかり。
たまに見たことがないものもあるが、関東ならではと言えるかは怪しい気がする。
はて、困ったぞ。
だが、救いの手が伸びてきた。
法事なので親戚が集まる。
私の兄も来ていた。
「これ土産な」
兄がくれたのは「鳩サブレ」だった。

鳩サブレは鎌倉のお菓子。
関東ならではという条件を満たしている。
お土産の鳩サブレをボクはその場で開けて食べた。
ミッションクリア
3.母の家で茶会を開く
今回は3連休を利用して実家に来ている。
当然、フルで法事をするわけでは無い。
一日余裕があり、そこで茶会となった。

この日は近所に住む姉が来ていた。
ボクと母と姉。
3人で久しぶりにお茶した。
楽しい時間だった。
4.みやげにナルトを買う
ボクとしたことが失態。
関東ならではのお菓子をスーパーで買う時にナルトを買うのを忘れた。
明日は法事。
スーパーなんぞに行くひまは無い。
このミッションは詰んだか?
だが、またしても救いの手が。
法事の帰り道、車内で姉から
「スーパー行くから付き合って」
と言われた。
ここでナルトゲット!
実家で一旦冷凍にして、自宅にナルトを持ち帰った。


このように3枚一組に切り分けて再び冷凍した。
これは袋麺アレンジで使おう。
ミッションクリア
5.おふくろの味を習う
習いたい料理は事前に決めてある。
その名はキミちゃん鍋
キミちゃんは祖母の名前だ。
祖母がよく作ってくれていた簡単鍋物を母が受け継いでいる。
簡単そうだし、おいしいのでぜひ今回習っていきたい。
と、思って茶会の時に聞いてみた。
母曰く
あんなの肉と玉ねぎ炒めて、他に豆腐とネギ入れて、しょうゆとみりんで味付けすればいいのよ
いや、ちゃんとレシピとして知りたいのだが!
特にしょうゆとみりんの割合とか。
その旨を伝えると一緒お茶していた姉が言った。
「それはおいしくなるように入れればいいのよ」
あーもう、この人達は・・・。
もういい。材料と手順はわかった。
それだけで良しとしよう。
この人たちからこれだけ聞き出せれば上出来だ。
ミッションクリア?
6.思い出の品を一つゲット
実はこのミッションが一番難題だった。
実家を離れたのが30年くらい前。
親父が亡くなって13年。
その間にボクの物は自分で処分した。
そして、親父の遺品も。
その結果、自分の思いでの物などきれいさっぱり無くなっていた。
このミッションだけはクリアできなかったな。
ポソリとつぶやいて夜景を眺めた。
ボクが住んでいた頃よりビルが建っている。
灯りがきれいだ。
その夜景を何気なくスマホのカメラで撮影した。

写っているビルの写真に親父の葬式の風景が重なった。
葬式はあのビルの近くの斎場で行われたのだった。
そして、生前の親父はそのビルが建設途中の頃からずっと見ていた。
いつできるのかと、待ち遠しい気持ちで見ていたのだろう。
建築現場で働いていた親父のことだから、血が騒いだのかもしれない。
一枚の写真から親父の思い出があふれ出てきた。
思い出の品はこの写真でいいか。
スマホの中に収めていればポケットの中に入るという条件も満たしている。
一番の難題、思い出の品を一つゲット 。
ミッションクリア
旅は楽しむもの
今回の旅は法事に参加するだけの実に味気ないものになるはずだった。
でも、自分で自分にミッションを課したことで途端にドキドキなものに変わった。
すんなりクリア出来ると思っていたのになかなかクリアで出来ないことの方が多かった気がする。
なんなら、最初から飛行機遅延というトラブルが発生した。
そして、うっかりナルトのことを忘れていたり。
目的の物がスーパーになかったり。
あるだろうと思っていた思い出の品はさっぱり無かったし。
今回の旅は番狂わせだらけだった。
でも、楽しかった。
番狂わせにどう対応するか?
そういうことが旅の醍醐味なのかもしれない。
それは普段の生活にも言えることなのではないか?
おもしろき こともなき世をおもしろく
いつだってこれが出来ること、楽しめることの大切さを今回の旅で実感出来た気がする。
最後にお願いです。
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