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ダンジョン迷子のリトルちゃん二、わな 罠 ワナ - 1

準備をゆっくりとして明日の朝出発となった。

 そして・・・。

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わな 罠 ワナ 1

二人の冒険者たちは帰らずの洞窟にやって来た。

嘆きの森の奥深く、山のふもとに入り口がある。

白フクロウ達の証言通り、入り口のそばに「空飛ぶボード」が落ちていた。

自分の革のブーツのつま先にあるボードを拾いあげて

リトルちゃん達でも六人乗りはきついなとシュウナは思った。

汚れを獣毛で編まれたマントで拭く。人一人くらいなら何とか乗れる程度か?

それをザックに押し込む。

自分の前をレザーアーマーにショートパンツとスパッツ、やはり革のブーツを身に着けた

トルーデがグリーンちゃんと先に洞窟に入って行くのが見えた。

シュウナは文句を言いながら慌てて着いて行った。

洞窟内はごつごつ岩だらけで湿っている。

が、驚いた事にほんのり薄暗いながらも視界が見通せる。

洞窟の壁に着いたコケのせいだとわかった。

トルーデの声がした。

「シュウナ、分かれ道だよ。」

洞窟に入って百メルト(この世界で一メルトはほぼ一メートル)ほどで道は二手に分かれた。

右と左、どちらに行くか、考える間もなくトルーデが言う。

「こっちでいいんじゃない?」

グリーンちゃんと二人

えいえいおー

とか言いながら進んでいく。

「いや、少し慎重に考えろよ。」

シュウナの言葉が届かないのかそのままトルーデは進んでいった。

しばらく行くと何か岩でできたボタンのような物があり、

「勇気を試せ、押してみよ」

とボタンのそばに書いてある。

「フーン、押してみようかな・・・。」

「いや、待て!ワナかもしれないし、何でもかんでも触るな・・・。」

シュウナの制止も聞かずにトルーデがボタンを押すと・・・。

 

二人の冒険者たちは巨大な岩に追いかけられ、ひたすら逃げるハメになった。

帰らずの洞窟に入って一時間も経っていないのにこの有様だ。

先を走っていたトルーデは弟の手をつかんで引っ張ると一緒に前に向かって跳んだ。

間一髪!二人は大岩の可動限界の通路に逃げ込むことが出来た。

「大丈夫?」

グリーンちゃんが倒れて荒い息をしている二人に声をかける。

トルーデの方が先に起き上がりグリーンちゃんを肩に乗せながら言った。

「やれやれ、逃げ延びたけど元の別れ道にもどったわね。」

岩に塞がれてそちら側にはもう行けそうもない。

シュウナも立ち上がり言った。

「トルーデ!だから言っただろう。何でもかんでも触るなって。」

トルーデには珍しく今回は素直に謝った。

「ごめん、ごめん、気をつけるよ。」

二人とグリーンちゃんは左の洞窟に行くしかない。

松明をつけなおし一行は左側の洞窟へ進んでいった。

 しばらく淡く光るコケの通路を進んでいった。

途中コウモリやネズミなどと遭遇するが魔物らしきものに会う事もなく

十メルト進んだところでまた、分かれ道だ。

 さて、どちらへ行こうとシュウナが考えている。

さすがに今度はトルーデも勝手に判断はしない。

そのかわりグリーンちゃんに相談した。

「あのさー。リトルちゃんは仲間のリトルリルがどっちに行ったかとか分からないの?」

 思い付きで行動するトルーデにいつも振り回されているが、たまにドキッとさせられる。

そうなのだ。「帰らずの洞窟」は地下迷宮であることは想像が付く。

これから先も分かれ道があるだろう。

グリーンちゃんが仲間の行き先がわかればいちいち分かれ道で悩む必要はない。

自分の姉のひらめきにはたまに感心させられるシュウナだった。

「うん、・・・足跡と・・・かにおい・・・とか、気配で・・・わかる。」

グリーンちゃんが言うと、トルーデの肩から飛び降りて地面を何やら調べ始めた。

しばらくして振り返ると二人に言った。

「あのね・・・こっちとこっちに・・・行ってる。」

つまり、迷子のリトルリルたちは二手に分かれたということか?

想定はしていたが嫌な事態になった。

リトルマザーの依頼は迷子のリトルリル六人を全員連れて帰ること。

もちろん一人も欠けるわけにはいかない。

だとしたらこちらも二手に別れるしかない。

シュウナはしゃがんでグリーンちゃんに訊いた。

「どっちに何人行っているか、分かるかい?」

グリーンちゃんが答えた。

「うん、わかる・・・。こっちには・・・一人だけ。こっちに三人・・・行った。」

それを聞いてシュウナは決断した。

「僕はその一人だけのリトルリルを追って連れ戻してくるよ。トルーデは三人の方に行って。」

トルーデはうなずいた。

「シュウナ、気を付けてね。こっちはなるべくゆっくり行くから。」

リトルちゃんを肩に乗せてまっすぐと通路を進む。

シュウナは方向を変えて奥への通路へ進んだ。

 トルーデ達と別れてシュウナは考え事をしながらひたすら進んでいく。

そもそも一日の時間差で探しているのにリトルリルに追いつけるのか?

こちらの行く先にまた分かれ道があったらどうするのか?

「やはり引き返すべきかな・・・。」

そう思った矢先にほんのり明るくなった部屋の入り口を見つけた。ドアは無い。

注意深く近寄ってそっと中をのぞく。

どのような照明設備になっているかはシュウナには想像のしようが無い。

中は円筒状の部屋で左右両端は深い深い奈落の底になっている。

部屋の真ん中を貫くように一本の道があるが道のど真ん中には

大きな石の巨人像がそびえ立っている。

単なる石像だろうか?それとも・・・。

「普通考えたら罠だな。」

シュウナはつぶやいた。ただ像を飾って置くだけとはやはり思えない。

ではどんな罠か?どこかに手掛かりが無いかシュウナは探してみた。

一見してそんなものは無い。

「やれやれ、そんなに都合よくはいかないか・・・。」

では、この通路をどうやって通り抜けるか?

まず、その辺に落ちている石ころを通路にいくつか投げてみる。

石像は微動だにしない。入り込んでも大丈夫なのだろうか?

でも念のため、シュウナは腰に下げたムチを手に取って力いっぱい前に向かって振った。

ムチの風切り音と同時に天井から炎の玉が降ってきた。

通路にあたって火の粉を上げながら弾むと左右両側の奈落の底へ

不気味な音を立てて落ちていく。

入り口から離れて難を避けながらシュウナは冷や汗をかいた。

「まいったな。あやうく黒焦げだ。」

シュウナは魔道具をよく使う。

ザックの中にいくつか魔法を封じた秘石があり

その中にはもちろん防御系の魔法もあるにはあるが、

さっきのような火力を何発も喰らっていられない。

その時部屋の天井方向から声がした。

「道なき道を行け。」

その、太く暗い声はどうやらこの部屋の番人である石像が言っているようだと

数秒遅れてシュウナは気が付いた。

 道なき道をいく?

どういうことだろう。

ここで言う道が無いところと言えば左右両端の奈落だが・・・。

正直落ちていくだけのような気がする。

試しにその辺の石ころやジャリを奈落に向かってまき散らした。

実は目の錯覚で奈落と見える部分に道があることを期待して。

期待は裏切られた。石ころたちは残らず奈落へ消えて行った。

それでは?

「壁に階段やはしごとかあるか?」

部屋に入らないよう注意しながら確認してみる。

見たところそのようなものは無い。

「いったい、どうしろっていうん・・・。」

悪態を最後まで言う事は出来なかった。

後ろの気配に気が付いたからだ。

弓矢の風を切る音が聞こえた。

間一髪かわすとシュウナは投げナイフで応戦した。

相手はどうやらゴブリン二匹らしい。そのうち一匹をナイフで倒した。

次回予告

ついに帰らずの洞窟に侵入したトルーデとシュウナ、そしてグリーンちゃん。

入ってすぐに罠にひっかかり、出だしは不調。

でも、迷子になった6人のリトルリルを無事に連れて帰るため

めげずにどんどん奥へ進んでいきます。

怪しい石像の部屋を前に対策を考えるシュウナに襲い掛かるゴブリン達。

シュウナはゴブリンを倒し石像の秘密を暴く事ができるのか?

一方、トルーデとグリーンちゃんの行方にも魔の手が・・・。

次回、わな、罠、ワナ2 

https://yumuya-brog.com/dannjyyonnmaigonoritorutyannwanawanawana2

乞うご期待!

  • この記事を書いた人

むにゅひこ

主に釣りと登山をこよなく愛する雑談好きなおじさんです。

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